苗代に種を蒔く際、「田の神様」をお迎えし、
種が無事に発芽して
苗に生長してくれることを祈るために
「水口祭」(みなぐちまつり) が行われます。
「苗代祭」とも言われています。
「水口」(みなぐち) は、田へ水を引く入り口で、
苗代田に水を供給する場所であり、
苗を育てる上で非常に重要な役割を担う
場所です。

江戸時代の元禄10(1697)年に刊行された
宮崎安貞が著した
農書『農業全書』(のうぎょうぜんしょ) には、
「稲は五穀の中で極めて貴い作物です。
稲は太陰の精であり、水を含んでその穂を
盛んにすると言われているように、
水によって生長するのですから、
土地の善し悪しはそれほど問題ではなく、
まず水のことを考えるべきです。」
という内容が書かれていて、
米作りでは、水が如何に大切かが窺えます。
「水口祭」は、
苗代田の農家が各家で行う場合と
神社で行う場合とがあり、
また供物も地方によって様々ですが、
「水口」に盛り土をして、
柳や栗の木や、
躑躅や空木、藤など山野に咲く花の枝、
または季節の花などを水口に挿して、
御幣 (ごへい) や神符、午王宝印 (ごおうほういん) を
棒に挟んで立て、松苗を飾り、
これを神の宿る「依代」(よりしろ) として
供え物をします。

供物としては、
種籾の残りを炒った「焼き米」や「神酒」を
供えます。
「焼き米」は苗代を荒らす鳥の害を
未然に防ぐためのもので、
「鳥の口」とか「鳥の焼米」と呼ばれます。
但し近年は、田植の機械化に伴い
育苗方式が様変わりしたため、
苗代づくりが激減し、
この「水口祭」も減っているそうです。