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コツコツと

春の「日永」(ひなが)

 
4月も後半になると、随分と日が伸びたことが
実感出来ますね。
 
 

日照時間に関係した季語

日照時間に関係した季語が
四季それぞれにあって、
春は「日永」(ひなが)、夏は「短夜(みじかよ)
秋は「夜長(よなが)、冬は「短日(たんじつ)
と言います。
 

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この四つの季語は
江戸時代から俳人に大層好まれて、
現代に至るまで沢山の句が詠まれてきました。
 

「日永」(ひなが)


昼間の時間が永いことを
「日永」(ひなが) と言います。
「永日」(えいじつ) とか「永き日」「日永し」と
も詠まれています。
 
「日永」(ひなが) は、昼の時間が短い
冬の「短日(たんじつ) に対応した捉え方で、
秋の「夜長(よなが) の反対表現です。
 
冬を越して春を迎えた喜びを込めて
春は「日永」(ひなが) と言うのに対して、
昼が暑く夜は涼しい夏は、
夜が短いのを惜しんで
短夜(みじかよ) と気持ちを込めて
言います。
 
ところで同じ「日永」(ひなが) という季語も、
初春・仲春・晩春では
ニュアンスが微妙に異なっています。
 
周知の通り、実際に
昼の時間が長いのは「夏至」の頃で、
最も短いのは「冬至」の頃です。

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冬至」の頃は、午後4時を回ると
もう薄暗くなり始めます。
その頃から日が伸び始める訳ですが、
年末年始の行事のため忙しく過ごすため、
日が伸びているのに気づかないうちに
節分」「立春」を迎えます。
 
そんな「初春」は、
まだまだ厳しい寒さの中にあるため、
「そう言えば日が伸びたなあ、
 春になったんだなあ」と
何となくホッとした気持で
「日永」という季語が用いられます。
 
その後も学生は
入試や卒業を控えてバタバタし、
大人も確定申告や年度末のあれこれやで
誰も彼も落ち着かない気分になりますが、
「春の彼岸」の頃になり
暖かな春の陽射しが届くようになると、
日が永くなって行くのが実感されて、
ホッとした、のんびりとした気分になります。
これが仲春の「日永」という季語の持つ雰囲気
です。
 
更に晩春にもなれば、
新年度の行事やお花見などの
慌ただしかったイベントも終わり、
また二十四節気の「穀雨」に入った頃から、
不安定だった春の天気も落ち着いてきて、
気温も上昇し暖かくなり過ごしやすくなるため
「春風駘蕩」(しゅんぷうたいとう) といったような
春風が優しく吹く、長閑で温和な気分が籠った
「日永」になります。

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ところで「日永」は
夏の季語のような気もしますが、
『万葉集』の時代から
春の重要な季語とされています。
 

遅日(ちじつ)


「日永」(ひなが)と同じく
春の昼の長さを言う言葉に、
「遅日」(ちじつ)があります。
 
「日永」と同じ意味ではあるのですが、
「遅日」は、一日の長さよりも、
日の暮れるのが遅くなり、
夕方の時間が長くなったことに
重きが置かれた言葉です。
 
実際は日の暮れるのは
夏至」の頃の方が遅いのですが、
日の暮が早い寒い季節を過ごしたことから、
春の「遅日」の方が、有難く感じられます。
 
ところで「遅日」と同じ言葉に、
「春日遅々」(しゅんじつちち) があります。
『詩経』(しきょう) の「豳風七月」(ひんぷうしちがつ)
の中に見える言葉です。
「春日」は春の太陽で、
「遅遅」は時間がのんびりと過ぎていくことで、
春の日がいつまでも暮れないことを言います。