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冥王星の日

2月18日は「冥王星の日」です。
1930年(昭和5年)のこの日、
アメリカの天文学者であるクライド・トンボーが
太陽系第9惑星「冥王星」を発見したことに由来しています。
 

 

冥王星の発見

 
1930(昭和5)年2月18日、
当時24歳の若き天文学者クライド・トンボーが
米ローウェル天文台で撮影された写真から、
「冥王星」を発見しました。

実は「冥王星」は、姿こそ発見されていませんでしたが、
何か天体がある事は予想されていました。
「海王星」の影響以外にも、
「天王星」の運動に乱れがあることから、
19世紀末には、たくさんの天文学者が、
「海王星」の外側に更に惑星があるのではと考えていました。
 
トンボーは、師匠パーシバル・ローウェルの予測に従って、
長年、第9惑星を探索し続けていました。
そして、1930年、師匠のローウェルの予測通り、
双子座の中に15等星の星を見つけたのでした。
 
 

「プルート」という名前

 
「冥王星」は15等星という暗さだったため、
暗黒の星として、
ギリシア神話の冥府の神ハデスの呼称から
「プルート(Pluto)」と名付けられました。
 
また、冥王星の5つの衛星にも、
それぞれ冥界に因んだ名前がつけられています。
  1. カロン 
    死者の魂を載せてスティックス川を渡り、
    あの世に運ぶ船頭の名前
  2. ヒドラ 
    巨大な胴体と9つの首を持ち、
    1本の首を切り落としても、
    すぐにそこから
    新しい2本の首が生えてくる怪物
  3. ニクス 
    ギリシャ神話の夜の女神ニュクスより
  4. ケルベロス 
    冥界の番犬
  5. スティクス 
    ギリシア神話で地下を流れ、
    現世と冥界とを分けるとされる大河、
    または、それを神格化した女神
 
 

ミッキーの愛犬の「プルート」

 
他の惑星に比べ、最近(1930年)、
しかも、アメリカ人が発見した唯一の惑星であったことから、
アメリカで「冥王星」は人気となりました。
 
 
ディズニー映画のキャラクター、
ミッキーの愛犬の「プルート」は、
スクリーンデビュー作
『ミッキーの陽気な囚人』が公開されたのが、
「冥王星」が発見された1930年の9月5日であったことから、
「プルート」と名付けられました。
 

 
ただ、この時点ではまだ無名で、
ミッキーのペットでもありませんでした。
また、次に出演した『ミッキーのピクニック』でも
ミニーのペット「ローヴァ―」として出演しています。
そして3作目となる『ミッキーの猟銃』で、
初めてミッキーのペット「プルート」として
出演することになりました。
 
 

和名「冥王星」

 
ローマ神話の冥途の王の名「プルート(Pluto)」に
「冥王星」という和名をつけたのは、
英米文学者で星の民俗学者でもあった
野尻抱影(のじりほうえい)です。
 

 
抱影は、出版社勤務の傍ら、
星座や天文に関する啓蒙書や随筆を執筆し、
『星座巡礼』『日本の星』や『日本星名辞典』など
多くの著作を残しました。
因みに、昭和を代表する時代小説家・大佛次郎は抱影の実弟です。
 
 

 
抱影は、星の和名の収集研究で知られ、
各地で様々に呼ばれる星の和名(方言)900を収めた
『日本星名辞典』は、
現在、日本各地の科学館やプラネタリウムで行われている、
星座やその伝説の解説には、
この抱影の著作が引用されることが多いそうです。
 

 
 

準惑星に

2006(平成18)年8月にチェコのプラハで開かれた
「国際天文学連合(IAU (International Astronomical Union))」の
総会において「惑星」の定義が定められ、
冥王星は「準惑星」に分類されることになりました。
 
「準惑星」とは、太陽を公転し、
球体になるのに十分な質量を持ちながら、
周辺の他の天体を排除するほど質量が大きくなく、
かつ「衛星」でないものです。
 

 
惑星の定義
  1. 太陽系の惑星とは、
    「太陽の周りを回り」
    「十分大きな質量を持つために
     自己重力が固体としての力よりも勝る結果、
     重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」
    「その軌道近くから他の天体を排除した」
    天体である。

  2. 太陽系の準惑星(dwarf planet)とは、
    「太陽の周りを回り」
    「十分大きな質量を持つために
     自己重力が固体としての力よりも勝る結果、
     重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」
    「その軌道近くから他の天体が排除されていない」
    「衛星でない」天体である。

  3. 太陽の周りを公転する、
    衛星を除いた、上記以外の他のすべての天体は、
    太陽系小天体(Small Solar System Bodies)と
    総称する。
 
 
「冥王星」は、発見されてしばらくは、
地球と同じかそれより少し小さいくらいの大きさと
思われていました。
しかし現在では観測技術の進歩により、直径2370kmと、
月よりも小さな天体であることが分かっています。
 
1990年代から「海王星」以遠で様々な天体が発見され始め、
このような状況下で、「冥王星」は海王星以遠にある
多くの似たような天体のひとつなのではないかと
考えられるようになりました。
 
 
更に2000年代に入ると、
「海王星」以遠の領域に次々と大型の天体が見つかり始め、
「冥王星」より大きいと考えられる天体の発見も報告されました。
これらの発見によって「惑星とは何か」という議論が起こり、
遂にIAUの総会で、
「冥王星」は「準惑星」に分類されることになりました。
 

 
 

一つの時代の終わり

 
「冥王星」は20世紀を象徴する天体だったと思います。
そして20世紀終盤から21世紀、
遂に、惑星の座を追われる運命となりました。
一つの時代に別れを告げる出来事だったのではないでしょうか。