うまずたゆまず

コツコツと

吉原の「片月見」

 
旧暦8月15日の
「中秋の名月(十五夜)」だけを眺めて
旧暦9月13日の「十三夜」の名月を眺めないのは
一般に「片月見」(かたづきみ) と言って、
「片月見は縁起が悪い」と言われて、
片月見はせぬものとされました。

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この習俗を応用して、江戸の吉原では
「十五夜」に登楼した客は
「十三夜」にも是非登楼するものだという
言い慣わしがありました。
 
吉原の風俗を叙述した安永2(1773)年の
『北里年中行事』には、
「片月見を忌みて名月を*仕廻 (しまい) たる客、
後の月見も約束なす」と記されています。
 *仕廻 (しまい):遊郭で遊ぶこと
 
ただ地方にこの「片見月」の習俗が
あまり浸透していないところを見ると、
或いは「片月見」は、吉原で勝手に
都合の良いことを唱え出したのではないかとも
言われています。
 
江戸の吉原では、五節句や盆の他、
「十五夜」と「十三夜」は
「大紋日」(おおもんび) となっていて、
「その日は特別な日だから」と理由をつけて
遊女と遊ぶための揚代 (あげだい) が2倍となるのが
相場でした。
 
縁起を担ぐ裕福な男達は、
2倍の揚代を払ってでも
「片見月の野暮な人」と言われないように
見えを張りました。
一方懐に自信のない男達は、
うっかり8月15日には宿泊しないように
気を付けました。
 

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