戦国武将・上杉謙信に
「九月十三夜陣中の作」という
有名な漢詩があります。
天正4(1576)年の12月頃から、
戦国最強の武将で、「軍神」と呼ばれていた
上杉謙信が能登の畠山義春を攻めて
約1年かけてやっと七尾城を落とした時に
詠んだものです。
その日がたまたま、
「中秋の名月」に次ぐ明月「十三夜」の
9月13日に当たっていたため、
陣中の兵士の慰労を兼ねて「月見の宴」を開き、
その席で作った詩が 「九月十三夜陣中の作」で、
詩吟を嗜む人なら知らない人がいないほど
有名な詩です。
なお謙信は、生涯この一作しか遺していない
そうです。
霜滿軍營秋氣淸
霜は軍営に満ちて 秋気 清し
數行過雁月三更
越山倂得能州景
越山併せ得たり 能州 の景
遮莫家鄕憶遠征
- 現代語訳 -
陣営には霜が真っ白に降り、
秋の気は清く澄み渡り、如何にも清々しい。
空を仰ぐと、幾列かの雁が鳴き渡って行き、
夜半の月は皎々と冴え渡っている。
いまや我が領地の越後越中に
能登の景色も合わせることが出来たのだ。
故郷の家族達が遠征の身を案じているかも
しれないが、ままよ、今はそんなことは
気にせず楽しむこととしよう。
なお謙信は七尾城へ入城する時に、
これを足掛りに上洛しようと考えますが、
翌年に急死してしまいました。
その後七尾城には、天正10(1582)年に、
織田信長から能登を与えられた前田利家が
入城しますが、すぐに山城であるを離れ、
平地の小丸山城を築きそこに移動したため、
七尾城は廃城となりました。