初夏になると、各地で「山開き」が行われます。
「山開き」の起源
日本では古来「山岳信仰」といって、
山岳を神聖視し、神霊の宿る地として崇めてきました。
山岳は入峰修行(にゅうぶしゅぎょう)をする山伏や修験者のみの世界で、
一般の人は立ち入ることの出来ない聖なる所とされ、
無理に入れば、天狗(てんぐ)に襲われると言われていました。
それが江戸中期以降、各地に山岳信仰の「講」が結成されて
山頂に祀られている神を拝むための
「講中登山」が行われるようになり、
そのために、夏季一定の期間のみ禁を解いて
一般の人間に開放しました。
これが「山開き」で、
初日を特に「お山開き」「開山祭」と呼んで、
山の神様にお伺いを立て、安全祈願をするための儀式し、
信徒達は山に登れることを祝いました。
この儀式としての「山開き」は、
現在でも日本各地の「霊山」で行われています。
そして最終日は「山仕舞い」と呼び、
山はまた山伏や修験者達のみの世界となりました。
「山開き」の時期
現在では、スポーツとしての登山の開始期を「山開き」と言います。
「安全に登山ができる期間か」を重視して選び、
「登山を解禁する日」としての意味合いが強くなっているようです。
山によって「山開き」の時期は異なっていて、
一般的には3月末から7月頃になります。
本格的な時期は6月から7月の「夏山」と呼ばれる期間が
メインとなります。
そして「山開き」の日には、
神事やお祭りなどのイベントが行われるところもあります。
期間外の登山は要注意
「山開き」の行事が行われる以前の
シーズン外に登山してはいけないという訳ではないケースが
ほとんどです。
しかし「山開き」前の登山はとてもリスクが高いです。
街中とは環境が全く異なります。
まだ雪が残る場所もあり、また山の天気も変わりやいため、
急に猛烈な突風や吹雪に見舞われ、
山岳遭難や事故に合うリスクが高いのです。
登山に関する十分な知識があり、装備をきちんと揃えた
ベテラン登山者であっても亡くなる事故が起こっています。
初心者や登山に慣れていない人にとっては、なおのこと。
登山客を対象にした山小屋や売店なども
期間外は閉まっていることがほとんどです。
気軽な気持ちでの山開き前の登山はおススメ出来ません。
「山開き」以降も
安全に登山出来るようになるという意味でもありません。
まだ残雪のある山でも、「山開き」が行われることも多いです。
事前に山の状況を確認して、充分に必要な装備を揃えることを
忘れずに行って下さい。
富士山の山開き
平成25(2013)年に世界文化遺産に登録された
日本を代表する山「富士山」は、
日本のみならず海外の登山者にも人気で、
通年多くの登山客で賑わいます。
富士山には4つの登山ルート
(吉田ルート・須走ルート・御殿場ルート・富士宮ルート)があり、
ルートによって山開きの時期が異なります。
それぞれ山開きを行なっています。
1.吉田ルート
[令和4(2022)年 7月 1日(金) ~ 9月10日(土)]
「吉田ルート」が開山する7月1日は、
年によっては登山道脇に雪が残っていたり、
一部の救護所が開いていなかったりします。
また、大抵7月初旬は梅雨が明けていないため、
天気にも恵まれないことが多いです。
更に、須走口側にある下山道も
「須走ルート」が開山するまでは利用出来ないため、
岩場の多い「吉田口の登りルート」を戻りながら
下山することになります。
山頂のお鉢巡りも他のルートが開山するまでは出来ません。
山に慣れていない方は、
「山開き」直後の登山は避けたほうが良いかもしれません。
2.静岡側ルート(須走・御殿場・富士宮)
[令和4(2022)年 7月10日(日) ~ 9月10日(土)]
静岡側の3つ登山ルートがあります。
富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルートで、
これらの登山道は7月10日の山開きとなります。
全ての登山道が開山すると、救護所や山小屋の準備も整います。
3.
山梨県にある北口本宮冨士浅間神社では、
「山開き」の前日6月30日には「富士山開山前夜祭」、
「山開き」当日7月1日には「富士山開山祭」が行われます。
「前夜祭」では富士講の方や富士吉田市民が参加するパレードが、
開山祭にはその年の登山者達の無事を祈る神事が開催され、
賑やかな登山シーズンの始まりを迎えます。
4.富士山・河口湖山開きまつり花火大会
5.富士山本宮浅間大社「富士山お山開き」
静岡県富士宮市にある「富士山本宮浅間大社」で行われる
「山開き」です。
富士登山の幕開けを告げるとともに、登山者の安全を祈願する祭りです。
英国大使館との交流事業、ミス富士山コンテスト授与式、
富士開山奉納手筒花火など、イベント盛り沢山の一日となります。

