京都では毎年8月22･23日に
「六地蔵めぐり」が行われます。
「六地蔵めぐり」とは
京都の旧街道の出入り口の六ケ所に
地蔵菩薩が祀られていて、
毎年8月22日・23日の両日に
家内安全、無病息災を祈願する
「六地蔵めぐり」が行われます。
六地蔵が安置されている6ヵ寺を巡り、
「お幡」と言われる色違いの札を受け(有料)、
6枚まとめて家に持ち帰り玄関先に吊るすと、
厄病退散、福徳招来の御利益があると
言われています。
なお前年の「お幡」は、
各寺境内に用意された紐に結んだり、
古札箱に収めます。
両日は各寺とも参拝が絶えない
京都の恒例行事となっています。
京の六口
今から約1200年前に平安京が成立すると、
京都の出入口から各地に通ずる街道が
平安京に通ずることになりました。
この時代の主な街道は、
奈良街道・西国街道・山陰街道・周山街道・
鞍馬街道・東海道の6つで、
これらの街道の京都の出入口は、
現在も粟田口、荒神口、鞍馬口など
地名として残り、
「京の六口」と呼ばれています。
京の六地蔵の起源
「京の六口」のそれぞれの出入り口には、
六体の「地蔵菩薩」が祀られています。
小野篁、
6体の地蔵菩薩を彫る
平安時代初めの官僚で、武芸にも秀で、
学者･詩人･歌人としても知られる
小野篁 (おののたかむら) によって
1本の木から六体のお地蔵さんが彫られたと
伝わっています
篁 (たかむら) は、48才の時に熱病を患い
一度息絶えて冥土に行った際、
地獄に落ちた人々が苦しんでいる姿を見ました｡
そこでは僧が人々の苦難を救っていました。
その僧は「私は地蔵菩薩である」と名乗られ、
「この地獄だけでなく、
餓鬼、畜生、修羅、人間、天上など
『六道』の迷いの世界を巡りながら
縁のある人々を救っています。
全ての人々を救いたいのですが
縁の無い人を救う事は出来ない。
私にとっても残念な事です。
ですから貴方は、この地獄の苦しい有様と
地蔵菩薩の事を人々に知らせて欲しい」
と告げられると、息を吹き返します。
蘇った篁は、木幡山 (こばたやま) から
1本の桜の木を切り出し、
「六道」に因んで6体の地蔵菩薩像を刻み、
木幡の里（現在の六地蔵付近）に納めました。
「六道」(ろくどう、りくどう) とは、
仏教の教義でいう
地獄道(じごく)･餓鬼道(がき)･畜生道(ちくしょう)
･阿修羅道･人間道･天上道の6つで構成され、
人は因果応報により、死後はこの「六道」を
輪廻転生する(生死を繰返しながら流転する)
という。
京の六口に地蔵を安置
平安時代後期になると、
「地蔵信仰」が高まります。
平安時代末期の保元年間（1156-1159）、
京の都で疫病が流行り、
保元2(1157)年に都を病魔や魔物から守るため、
心配された後白河法皇の勅命により、
平清盛は西光法師 (さいこうほうし) に命じて、
都の出入り口となる6カ所に
六角形のお堂を建てさせ、それぞれのお堂に、
小野篁が彫った6体の地蔵菩薩を祀り、
西光法師が最初に「六地蔵」を巡られました。
これが「六地蔵巡り」の始まりと
言われています。
六つの街道口が、
六道の辻、つまり異界との境界に見立てられ、
そこに旅人の守護神的な役割を担って
お地蔵様が置かれたのではないでしょうか？
「お地蔵様は六道を巡って
あらゆる衆生の危機を救ってくれる」という
広く民衆に受け入れられた地蔵信仰や、
「お地蔵様は六道の衆生の救済のために
六種の形をとって現れる」という
六地蔵信仰もそこには作用していたのでしょう｡
江戸時代に現在の「六地蔵巡り」の形と
なりました。
ところでこの西光法師は、
鹿ヶ谷 (ししがたに) で平氏討伐を謀り、
発覚して捕らえられ、斬首されました。
六地蔵を安置する
6つの寺院
小野篁の彫った6体の地蔵菩薩は、
いずれも白塗りで鮮やかな装飾が施されて、
現在は6つの寺院に安置されています。
「六地蔵巡り」の2日間のみ、
地蔵が安置されている地蔵堂の戸板が外され、
直接参拝することが出来ます。
6つの街道にある寺院は以下の通りです。
・伏見六地蔵：大善寺
伏見区桃山町西山２４ ー 奈良街道
伏見区桃山町西山２４ ー 奈良街道
・鳥羽地蔵：浄禅寺
南区上鳥羽岩ノ本町９３ ー 西国街道
南区上鳥羽岩ノ本町９３ ー 西国街道
・桂地蔵：地蔵寺
西京区桂春日町９ ー 山陰街道
西京区桂春日町９ ー 山陰街道
・常盤地蔵：源光寺
右京区常盤馬塚町 ー 周山街道
右京区常盤馬塚町 ー 周山街道
・鞍馬口地蔵：上善寺
北区鞍馬口寺町東入る上善寺門前町
ー 鞍馬口街道
北区鞍馬口寺町東入る上善寺門前町
ー 鞍馬口街道
・山科地蔵：徳林庵
山科区四ノ宮泉水町１６ ー 東海道
山科区四ノ宮泉水町１６ ー 東海道
★ 六地蔵発祥の地 ★
伏見地蔵（大善寺）
・地蔵名：伏見六地蔵
・街道名：奈良街道
・寺 名：大善寺
・住 所：伏見区桃山町西山24
大善寺 (だいぜんじ) は、仁寿2(852)年に
小野篁が彫った伝説の六体の地蔵を安置した
浄土宗のお寺です。
初めはここ「大善寺」に
六体の地蔵尊が安置されていたため、
大善寺は現在でも「六地蔵」と呼ばれ
親しまれています。
地蔵堂に安置されている重要文化財の
地蔵菩薩立像「伏見六地蔵」は、
真綿が蚕から作られることから、
虫の供養の意味を込めて綿をかぶっています。お幡の色は「黄色」です。
鳥羽地蔵（浄禅寺）
・地蔵名：鳥羽地蔵
・街道名：鳥羽街道
・寺 名：浄禅寺
・住 所：南区上鳥羽岩ノ本町93
文覚 (もんがく) 上人が開基と伝えらる寺院で、
境内に袈裟御前 (けさごぜん) の首塚
「恋塚」があることから、
「恋塚浄禅寺」(こいづかじょうぜんじ) とも
呼ばれています。
「鳥羽地蔵」の高さは約2.3mで、
寄木造の像は白塗りで、
装飾には極彩色の截金文様が施されています。
平安京のメインストリートだった
朱雀大路から続く鳥羽街道に安置されました。お幡の色は黄色です。
桂地蔵（地蔵寺）
・地蔵名：桂地蔵
・街道名：山陰街道
・寺 名：地蔵寺
・住 所：西京区桂春日町9
南北朝時代の暦応2(1339)年に、
光厳天皇の勅許のより虎関師錬 (こかんしれん) が
大明国師 (だいみんこくし) の塔所として建立し、
江戸時代の慶長7(1602)に、
細川幽斎が再興しました。
方丈の襖絵は長谷川等伯の筆で、
重要文化財に指定されています。
木の最下部から彫られた「桂地蔵」は、
高さ約2.65mもある一番大きな地蔵です。
ここから「大きい=お姉さん」といった意味で
「姉井地蔵」とも呼ばれています。
お幡の色は緑です。
常盤地蔵（源光寺）
・地蔵名：常磐地蔵
・街道名：周山街道
・寺 名：源光寺
・住 所：右京区常盤馬塚町1
臨済宗天龍寺派の尼寺です。
この辺りは鳥羽天皇皇女の八條女院の
山荘常盤殿があった地と伝えられている他、
寺の東には平安時代の美人として知られる
常盤御前の墓があることから、
地蔵堂に安置している地蔵菩薩像は
「常盤地蔵」と呼ばれています。
「常盤地蔵」が6体の中で一番小さいことから
上善寺の ｢姉子地蔵｣ に対し、末っ子を意味する「乙子地蔵」(おとごじぞう) と呼ばれています。
お幡の色は紫です。
鞍馬口地蔵（上善寺）
・地蔵名：鞍馬口地蔵
・街道名：鞍馬口街道
・寺 名：上善寺
・住 所：北区鞍馬口寺町東入る
上善寺門前町
上善寺門前町
貞観5(863)年に千本今出川に創建され、
文禄3(1594)年に現在の地へ移りました。
江戸時代まで深泥池の畔に祀られていましたが
明治初期に上善寺へ移され、
「鞍馬口地蔵」と呼ばれています。
他にも「深泥池地蔵」(みぞろがいけ) とか
「姉子地蔵」とも呼ばれています。
お幡の色は赤です。
徳林庵（山科地蔵）
・地蔵名：山科地蔵
・街道名：東海道
・寺 名：徳林庵
・住 所：山科区四ノ宮泉水町16
東海道の出入り口である山科に建つ
「徳林庵」は
室町時代の天文19(1550)年に創建されました。
「山科地蔵」は東海道の守護仏として
慕われてきました。
お幡の色は青です。
