「秋の七草」は、『万葉集』に収録されている、
山上憶良が詠んだ2首の和歌が由来と言われています。
秋の野に 咲きたる花を
指折り(およびをり)かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
指折り(およびをり)かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花
1つ目の歌で
「秋の野に咲いている草花を指折り数えると7種類ある」とし、
2つ目の歌で
「それは萩の花、尾花、葛の花、撫子の花、女郎花、
また藤袴、朝貌(あさがお)の花である」と述べています。
「朝貌」については諸説ありますが、
現在では「桔梗」(ききょう)というのが定説です。
-桔梗(ききょう)- -朝顔(あさがお)-
「春の七草」が七草粥にして無病息災を祈るものに対し、
一方、「秋の七草」はその美しさを鑑賞して楽しむだけでなく、
薬用など実用的な草花として
昔の日本人に親しまれたものが選ばれています。
「秋の七草」の鑑賞時期は、
旧暦の7月、8月、9月ですので、
現在の暦に当てはめると、
9月中旬頃から11月初旬頃になります。
秋の七草は以下の七つです。
萩(はぎ)
「草かんむり」に「秋」と書く、まさに秋を代表する花の1つです。
ですが実際は、枝垂れた枝に赤紫色の花が
夏の盛りから咲き始めて、秋の初めに満開になります。
山野に自生していたり、庭木としても使われています。
根が、咳止めや胃の痛み、下痢止めなどに効果があるとして
漢方としても使われてきました。
また、秋のお彼岸にお供えする「おはぎ」の名の由来にもなっています。
尾花(おばな)=芒、薄(すすき)
山や野原などに自生しているススキは、
平安時代は赤い花が咲いている状態を「薄」(すすき)、
白い穂になっている状態を「尾花」(おばな)と
使い分けていたようです。
確かにススキの穂は馬の尾に似ています。
夏から秋にかけて十数本の分かれた花穂を浸けます。
根や茎に、利尿作用があると言われています。
葛(くず)
8~9月に赤紫色の、藤を逆さまにしたような美しい花を咲かせます。
この植物は雑草として厄介者扱いされることが多いのですが、
非常に有用な植物で、
根からはでんぷん質「葛粉」が得られ、
葛切りや葛餅などとして食用されます。
風邪薬として有名な「葛根湯」の原料にもなります。
また、肩こりや神経痛にも効果が期待出来ると言われています。
蔓繊維の芯を解して繊維にしたものは、
「葛布」と呼ばれる強靱な生地を作り出します。
蹴鞠の袴「葛袴」は、この生地で仕立てたスポーツ向けの袴です。
撫子(なでしこ)
秋の花とは言え、かなり長期間咲いているので、
別名「常夏」と言われています。
「大和撫子」は日本原産のカワラナデシコの別名です。
花弁の縁を細かく裂いたような、可憐な花で、
和歌などでは、美しい女性の代名詞とされます。
煎じて飲むと、むくみや高血圧に効果が期待出来ると言われています。
女郎花(おみなえし)
黄色い小花を搗ける愛らしい花です。
女性の美しさの例えに使われることもあります。
根に消炎作用があると言われています。
藤袴(ふじばかま)
「秋の七草の中」で、
最も目にする機会が少ないのがこのフジバカマで、
今や絶滅危惧種です。
淡いピンク色の小さな花が8~9月頃に咲きます。
フジバカマの葉には、
桜の葉と同じように「クマリン」という成分が含まれており、
乾燥させると「桜餅の匂い」がします。
良い香りの植物と言うことで、
古代Chinaではフジバカマを「蘭草」と呼び、
入浴剤にして沐浴すると、魔除けになると言われました。
また口臭予防にも用いられ、
帝の前に出る時には蘭草を口に含んだとも言われています。
日本では、乾燥させた茎や葉を香料として使われてきました。
また、煎じて飲むと、糖尿病に効果が期待出来るそうです。
桔梗(ききょう・朝貌のこと)
『万葉集』で「朝皃之花」(朝顔の花)とされている花は、
「桔梗」(ききょう)だとする説が一般的です。
奈良時代の「アサガオ」=「桔梗」であったところに、
平安時代に漢方薬として輸入され、
「桔梗」は「キキョウ」として区別されるようになったと
言われています。
星のような青紫色の花をつけます。
根を煎じて飲むと咳や喉の痛みに効果が期待出来るそうです。