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細小波(いさらなみ)

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細小波(いさらなみ)

「細小波」(いさらなみ) は、
小さな波のことかと思えば、そうではなく、
「霧」(きり) のことを言います。
「細小波」を「さざれこなみ」と読む場合は、
こまかに立つ波、さざなみの意味になります。
 
 
 
「いさらなみ」の「いさら」は、
少しばかりのと言う意味を添える接頭語です。
大海原のような空を揺蕩う (たゆたう) ように
動いていく「霧」を小さな波にたとえて
「細小波」(いさらなみ)といった訳です。
揺蕩う(たゆたう)
 ①水などに浮いているものや煙などが、
  あちらこちらと定めなく揺れ動く。
  ひと所に留まらないでゆらゆらと動く。
  ただよう。
 ②心が動揺して定まらなくなる。
  ぐずぐずして決心がつかない状態になる。
  躊躇する。ぐずぐずする。
- 出典:精選版 日本国語大辞典 -
 
「細小波」が引いた後には、
穏やかで静かな空が広がります。
 

狭霧(さぎり)

『古事記』には、霧の神がペアで登場します。
伊邪那岐命・伊邪那美神の御子神である
山の神・大山津見神(おおやまつみのかみ)
野の神・鹿屋野比売神(かやのひめのかみ)
二神は、山野に関係する八柱の神々を生みます。
その第三、四番目に生まれた御子神、
天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)
国之狭霧神(くにのさぎりのかみ)
霧の神です。
 
 
この二柱の神は、
山の頂上など上空にかかる霧を
神格化した存在で、
山岳信仰の根強い日本においては、
神域たる山中を俗世から覆い隠す存在として
認知されていたようです。
 
 
早朝、水辺や森では、
視界が遮られるほどの霧が立ち込め、
幻想的な風景が見られます。
 

「霧」と「雲」「雲海」の違い

 
空気中に浮かんで
地面に接していないものが「雲」で、
地面に接しているのは「霧」です。
つまり「霧」は地面に接した「雲」です。
 
 
山頂付近に「雲」がかかっている時、
山に登ってその「雲」の場所まで行くと、
辺り一面が「霧」に覆われているという
訳です。
 
 
また「雲海」は、
飛行機や高い山の上から下を見た時に、
雲が海のように広がって見える現象ですが、
この雲は層雲や層積雲などといった、
上空2000m以下の高さに出来る雲で、
それより高い標高の場所に行けば、
「雲海」を見ることが出来るという訳です。
 
 
つまり同じ「雲」でも、
見る場所によって呼び方が変わるのです。
 

霧は秋の季語だけれど・・・

「霧」は、俳句などでは「秋」の季語ですが、
条件さえ揃えば一年中見ることが出来る
現象です。
 
夏の霧(なつのきり)
 
「夏の霧」(なつのきり)は、
山地や海辺で出会うことが多く、
たとえば高原に広がる朝の霧は、
その日訪れる暑さを思わせないほどの
涼しさをもたらしてくれます。
 
 
「海霧」(うみぎり・かいむ)は、
温かく湿った空気が
冷たい海面上に吹き込んだ時に
空気の下層が冷やされて生じる霧のことです。
夏になると、北海道の南東部の沖では、
「じり(海霧のこと)」と呼ばれる
濃霧(ガス)が発生します。
これは、太平洋上を吹く高温多湿の南風が
冷たい親潮寒流の上に吹き込み、
下から冷やされるために生じます。
 
 
このような「海霧」による視界不良の際、
船舶や灯台などでは
衝突や座礁などの海難を防止するために、
「霧笛」(むてき) を鳴らして警告します。
明治12(1879)年に青森県尻屋崎の灯台に
初めて設置されました。
その後、舶用レーダーやGPSなどの
航海計器の普及により、国内の霧信号所は
平成22(2010)年3月末に全廃されました。
 
 
冬の霧(ふゆのきり)
 
陰鬱で重々しい感じがする
「冬の霧」(ふゆのきり)は、
早朝、外気が極端に冷えて、
河川などが比較的温かくなる時に、
水面から蒸発した水蒸気が
急激に冷やされることで発生します。
 
 
空気中に浮かんでいる水滴は
過冷却状態となるため
0℃以下でも容易には凍りませんが、
気温が-30℃以下になるような
極めて限られた気象条件下、
空気中の水蒸気が直接昇華して、
小さな氷の結晶となって浮遊しているために
視程が妨げられることがあります。
これを「氷霧」(こおりぎり・ひょうむ) と言います。
気象庁では、視程1km未満となっている状態を
「氷霧」と規定し、「氷霧」が予想される時には
予報では「霧」としています。
 
 
気温が氷点下の時に、樹木や地物に、
空気中の水蒸気や過冷却の水滴が吹きつけられ
昇華または凍結して出来る氷を
「霧氷」(むひょう) と言います。
風が強くない晴れた夜から早朝にかけて
霧が発生した際など、
樹木や地物の風上側に出来やすいです。