
虫聞き(むしきき)
昔は、秋に鳴く「虫の声」に、
秋の訪れや深まりを感じたり、
涼しさや寂しさを感じたりしてきました。
これは、日本人独特の感性だと言います。
夕暮れ時に、野や山に出掛けて、
虫の声に耳を澄ませて楽しむことを、
「虫聞き」と言います。
平安時代には、既に「虫の声を愛でる文化」が
ありました。
『源氏物語』38帖「鈴虫」の中でも、
光源氏が女三宮の部屋の前庭を
野の風情に造り替え鈴虫などの秋の虫を放し、
虫の音の鑑賞をする場面があります。
江戸時代には、「花見」「月見」「菊見」「雪見」
そして「虫聞き」が庶民の「五つの風流」と
されました。
江戸時代の「虫聞き」の名所と言えば、
広尾や道灌山(現在の鶯谷から西日暮里の丘)、
それから上野の不忍池などでした。
家族で酒肴を持って出掛けたという
記録が残っています。(『江戸名所図鑑』)
現在でも、東京都の「向島百花園」や
国宝「彦根城」や京都の寺院などでは、
「お月見」や「茶会」と合わせて
「虫聞き」が行われています。
虫合わせ
平安時代、強の相野谷鳥辺野などに赴き、
松虫や鈴虫などの鳴く虫を捕えては、
籠に入れて持ち帰る「虫狩り」や、
捕ってきた虫を宮中に放ち、
その音を楽しむ「虫選び」、
また、捕った虫の姿や鳴き声を競い合う、
「虫合わせ」に興じたそうです。
虫の声は日本人にしか聞こえない?

虫の「声」は、日本人には聞こえるのに、
外国人には聞こえないと言われています。
東京医科歯科大学の角田忠信教授が
ご自身の体験に基づき研究をされた結果、
次のような説を導き出しました。

人間の脳は右脳と左脳とに分かれ、
右脳は「音楽脳」とも呼ばれ、
音楽や機械音、雑音を処理しています。
一方、左脳は「言語脳」と呼ばれ、
人間の話す声の理解など、
論理的知的な処理を受け持ちます。
この機能は日本人も西洋人も一緒ですが、
「虫の音」をどちらの脳で聴くかという点で
違いが見つかったそうです。
西洋人は「虫の音」を右脳の「音楽脳」で処理し、
いつもの騒々しい雑音だと慣れてしまえば、
意識に上らなくなってしまいます。
一方日本人は、「虫の音」を
左脳の「言語脳」で処理し、
「虫の声」として聞いていることを
突き止めました。
これは、世界でも日本人とポリネシア人だけに見られる特徴で、Chineseや韓国人は
同じ東アジア人であっても西洋型だそうです。
「虫の音」と同様に、
日本人が左脳で聴く音には、
「波」「風」「雨の音」「小川のせせらぎ」
などがあるそうです。
日本人はよく情緒的と言われますが、
自然の音を雑音として認識するのではなく、
自然から発せられている言葉として認識してる
からなのでしょうか。