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コツコツと

歳の市(年の市)

スーパーマーケットやデパートがない時代、
生活必需品を買い求める人々が向かったのは
「市」です。
特に年の瀬は、新年を迎えるに当たり、
お正月用品や新調したい道具類が集まる
「歳の市」が各地に立ちました。
 
正月を迎えるための買い物には、
神棚や注連縄飾り(しめなわかざり)
門松、鏡餅に始まり、
橙、裏白(うらじろ)、串柿、
そして正月料理の食材や雑煮の餅・・など、
挙げれば切りがないほどあります。
 

 
「歳の市」とは、毎月開かれていた定期市のうち
その年の最後の市「納めの市」で、
昔は、神社やお寺の境内には「大市」が、
町のあちこちには「小市」が立ったと言います。
 
成立は、万治年間(1658~1661)頃の
浅草とされています。
 

 
 
江戸の主な「歳の市」は、
  • 12月14・15日 :深川八幡境内
  • 12月17・18日 :浅草観音境内
  • 12月20・21日 :神田明神境内
  • 12月22・23日 :芝神明境内
  • 12月24日   :芝愛宕神社下
  • 12月26日   :麹町平川天神境内
  • 12月25日~30日:日本橋四日市
で、最も有名で人を集めたのは、
浅草観音の歳の市」でした。
そして日本橋の歳の市は
「納めの歳の市」と呼ばれ、
まさに一年の締め括りの「歳の市」でした。
但し、今現在も残るのは、
浅草の羽子板市」と「薬研堀不動尊の歳の市」
だけです。
 
 
「歳の市」で売られていた物は、
注連縄飾りや神棚、羽子板や凧などの
正月用品だけでなく、
海老や鯛、昆布、餅などの食品、
まな板や柄杓、桶などの台所用品。
更に衣料や植木まで幅が広く、
生活雑貨全般に及びました
 
それは、新年を迎えるに当たって
日用品を新調することが「お清め」を意味した他、
感謝の気持ち、新年へ向けての祈り、
美意識、気構え・・・
日本人特有の精神構造があったのでしょう。
 
年用意(としようい)
新年を迎えるために、歳末に準備をしておく、煤掃き、餅搗、床飾り、春着の仕立てなど、
様々の用意をすることを言います。
おせち料理の材料をまとめ買いしたりもします。近年は元日から店を開ける所もあるので、
「年用意」の必要もありませんが、
あれこれと準備をして、正月を待つのも
楽しいものです。
 
「歳の市」は江戸を中心として各地に広がり、
かなりの賑わいを見せていました。
ところが明治時代になると、
商店の出現により、お正月関係のアイテムは
こういった商店が取り扱うようになったため、
徐々に開催される市の数は少なくなりました。
 

羽子板市

台東区の浅草寺(観音様)の境内などで
開かれた市で、
売られる商品が羽子板中心になったため、
羽子板市」と呼ばれるようになりました。
毎年、12月の17日、18日、19日の3日間、
羽子板市」が開かれています。
 

www.asakusa-toshinoichi.com

 

薬研堀不動院の歳の市
(やげんぼりふどういん)

 

 
川崎大師の東京別院で、
目黒不動尊、目白不動尊とともに
「江戸三大不動」として慕われています。
 
この薬研堀不動尊の通りで繰り広げられる
薬研堀不動院の歳の市、歳末大出庫市」は
江戸の日本橋四日市の流れを汲む
江戸から続く歴史ある由緒ある「歳の市」です。
令和5(2023)年は12月26日(火) ~ 28日(木)に
開催されます。
 
昭和40(1965)年、地元の町会商店会の有志が
江戸以来の伝統行事であり、
下町の風物詩をしっかりと後世に残すべきと
「薬研堀不動尊 歳の市保存会」を組織して、
復活されました。
 
また「薬研堀不動院」のある東日本橋には
問屋街が近くにあり、
同時期に歳末大出庫市が開催されています。