納め薬師
毎月8日の「薬師如来」の縁日です。
「縁日」(えんにち) とは、
特定の神仏と人々が特別に繋がり、
ご縁が深くなる特別な日です。
12月8日は年内最後の「薬師如来」の縁日で、
「納め薬師」です。
この1年間の御加護を感謝するとともに、
新しい1年に向けての祈願をする行事です。
薬師如来(やくしにょらい)
薬師如来について
「薬師如来」(やくしにょらい) の
「薬師」とは「病を治す薬を持つ医師」で、
「如来」とは仏の最高位を示す称号のことで、
「薬師如来」は「医師の仏様」として、
病気や苦しみから人々を救う、
仏教における医療と健康の守護仏として
知られています。
そのため「大医王」(だいいおう) とか
「医王善逝」(いおうぜんぜい) とも称します。
「薬師如来」は、菩薩の時に12の大願を立て、
その中で人々の病患を救うとともに
悟りに導くことを誓い、
仏と成ったと説かれています。
仏となると「東方浄瑠璃世界」の主となり、
「薬師如来」は両脇に
「日光」「月光」の2菩薩と、
更に「薬師如来」の十二の大願を護持する
守護神の「薬師十二神将」を従え、
人間の病苦を癒し、苦悩を除くという
如来には珍しく、現世利益で信仰集めています。
薬師如来の
十二大願(じゅうにだいがん)
1. 光明普照(こうみょうふしょう)
自らの光で三千世界を照らし、
あまねく衆生を悟りに導く
2. 随意成弁(ずいいじょうべん)
仏教七宝の一つである瑠璃の光を通じて
仏性を目覚めさせる
3. 施無尽物(せむじんぶつ)
仏性を持つ者たちが悟りを得るために
欲する、あらゆる物品を施す
4. 安立大乗(あんしんだいじょう)
世の外道を正し、衆生を仏道へと導く
5. 具戒清浄(ぐかいしょうじょう)
戒律を破ってしまった者をも
戒律を守れるよう援ける
6. 諸根具足(しょこんぐそく)
生まれつきの障碍・病気・身体的苦痛を
癒やす
7. 除病安楽(じょびょうあんらく)
困窮や苦悩を除き払えるよう援ける
8. 転女得仏(てんにょとくぶつ)
成仏するために
男性への転生を望む女性を援ける
9. 安立正見(あんしんしょうけん)
一切の精神的苦痛や煩悩を
浄化できるよう援ける
10. 苦悩解脱(くのうげだつ)
重圧に苦しむ衆生が解き放たれるべく
援ける
11. 飽食安楽(おんじきあんらく)
著しい餓えと渇きに晒された
衆生の苦しみを取り除く
12. 美衣満足(みえまんぞく)
困窮して寒さや虫刺されに悩まされる
衆生に衣類を施す
日光菩薩・月光菩薩
(にっこうぼさつ・がっこうぼさつ)
「日光菩薩」・「月光菩薩」は、
「薬師如来」の脇侍で、
左が「日光菩薩」、右は「月光菩薩」で
三尊で並び独尊で祀られることはありません。
「日光菩薩」は「日光遍照菩薩」とも呼ばれ、
太陽の如く光を照らして苦しみの闇を消すと
言われています。
「月光菩薩」は「月光遍照菩薩」とも呼ばれ、
月の光のような優しい慈しみの心で煩悩を消す
と言われています。
薬師十二神将
(やくしじゅうにしんしょう)
「薬師十二神将」は、
昼夜十二時、四季十二月、十二の方角に対し、
いついかなる時も私達衆生を守って下さり、
また十二の方角を守っていることから、
干支(十二支)の守護神としても信仰されて
います。
十二 支 |
方角 | 時刻 | 月 | 薬師十二神将 |
子 | 北 | 午前 0時 |
11月 | 12. 毘羯羅大将 |
丑 | 北東 |
午前 2時 |
12月 | 11. 招杜羅大将 |
寅 | 北東 やや東 |
午前 4時 |
1月 | 10. 真達羅大将 |
卯 | 東 | 午前 6時 |
2月 | 9. 摩虎羅大将 |
辰 | 南東 やや東 |
午前 8時 |
3月 | 8. 波夷羅大将 |
巳 | 南東 やや南 |
午前 10時 |
4月 | 7. 因達羅大将 |
午 | 南 | 正午 | 5月 | 6. 珊底羅大将 |
未 | 南西 やや南 |
午後 2時 |
6月 | 5. 頞儞羅大将 |
申 | 南西 やや西 |
午後 4時 |
7月 | 4. 安底羅大将 |
酉 | 西 | 午後 6時 |
8月 | 3. 迷企羅大将 |
戌 | 北西 やや西 |
午後 8時 |
9月 | 2. 伐折羅大将 |
亥 | 北西 やや北 |
午後 10時 |
10月 | 1. 宮毘羅大将 |
薬師如来の御姿
「薬師如来」は、正式名を
「薬師瑠璃光如来」(やくしるりこうにょらい) といい
体からは深い瑠璃色の光を放ち、
その美しい色は心身を清め、癒す力を
象徴しています。
左手に「薬壺」(やっこ) を持っていますが、
これは病気を治す薬を持っていることを
象徴しています。
なお、如来の中で物を持つのは
薬師如来だけです。
また右手は「施無畏印」(むせいいん) という
薬指を少し前に傾けた形をしています。
これは「恐れることはない、私はあなたを守る」
という意味のある手印です。
薬師如来の御利益
薬師如来の御利益は多岐に渡ります。
主なご利益は以下の通りです。
病気平癒
「薬師如来」は、
身体の病気を治す力を持ちます。
特に、重病や慢性的な病気に苦しむ
人々に対して、その力を発揮します。
健康長寿
「薬師如来」は、
健康と長寿をもたらす仏様です。
日々の健康を保ち、長生きするための
御加護を受けることが出来ます。
心の平安
「薬師如来」の教えは、
心の浄化と平安を促します。
瞑想や真言を通じて、
心の中の不安や悩みを取り除くことが
出来ます。
家族の健康
「薬師如来」の御利益は、
個人だけでなく家族全体にも及びます。
家族の健康と幸福を願う際にも、
薬師如来に祈ることが効果的です。
災難除け
「薬師如来」は災難や厄難から守る力も
持ちます。
災いを避け、安全な生活を送るために、
その御加護を求めることが出来ます。
日本三大薬師
日本では奈良時代に伝来し、
平安時代には
「薬師如来」を信仰する寺院が盛んになり、
その信仰は現代にも続いています。
なお「日本三大薬師」には諸説ありますが、
神奈川県勢原市の「日向薬師」(ひなたやくし) 、
高知県大豊町の「柴折薬師」(しばおれやくし) 、
新潟県上越市の「米山薬師」(よねやまやくし) が
挙げられます。
他にも「日本三大薬師」には、
愛知県新城市の「峯薬師」(みねのやくし) 、
愛媛県西予市の「山田薬師」(やまだやくし) 、
島根県出雲市の「一畑薬師」(いちばたやくし) 、
福岡県久留米市の「永勝寺」(えいしょうじ) 、
福島県いわき市の「赤井嶽薬師」などが
挙げられます。