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横手の雪まつり・・・「横手のかまくら」

 
毎年2月、秋田県横手市の中心市街地では、
「横手の雪まつり」が行われています。
 
市内のあちこちには、町内会や各団体による
「かまくら」と呼ばれる雪室が立ち並び、
祭の最終日には、大勢の若衆がもみ合いながら
山頂にある「旭岡山神社」(あさひおかやまじんじゃ) に「ぼんでん」が奉納されます。
 
 

横手のかまくら

 
毎年2月15、16日の夜に行われる
「横手のかまくら」は、
「かまくら」のイベントとしては
特に全国的に知られているお祭りです。
 
 
水神様を祀る横手の
約450年の歴史があると言われ、
元々は、「かまくら」の中に祀られた水神様
(横手では「おしず(清水)の神さん」)に
家内安全・商売繁盛・五穀豊穣などを祈願する
「小正月」の伝統行事でした。
それが時代の変化とともに観光化が進んで
現在のような形になりました。
 
市内各地に設けられた「かまくら会場」には、
約60基の「かまくら」が設置され、
中には地元の子供達が入って、
七輪を置いて餅を焼いたり甘酒を用意して、
「入ってたんせ(かまくらに入って下さい)」
「拝んでたんせ(水神様を拝んで下さい)」と
道行く人々に声を掛けます。
 
 
中に入って水神様にお賽銭をあげると、
子供達は客人をもてなすために
あまえこ(甘酒)やお餅を振舞ってくれます。
 
 
七輪などが置かれた「かまくら」の中は、
意外に暖かく居心地の良いことから、
あまえこ(甘酒)やお餅などを食べながら、
ついつい長居をしてしまいます。
 
秋田の民俗学者として高名な
奈良環之助 (ならたまのすけ) は、
「子供にとっては、カマクラが極楽で、
 ナマハゲが地獄であった」と述べています。
 
おしず(清水)の神さん
横手では、水神様のことを、
「おしず(清水)の神さん」と呼んでいます。
横手地方は、良質の井戸が少なかったために、昔から飲料水で大変苦労したそうで、
水神祭りが盛んだったそうです。
 
また古くから水田稲作に依存してきた農民は、
水を敬う心が厚く、日常的に
水神を家や屋敷内に祀っていました。
 
かまくら会場
<かまくら>
 ・横手市役所本庁舎前
 ・横手公園
 ・二葉町
 ・旧片野家
 
<ミニかまくら>
 ・横手市蛇の崎川原
 ・横手南小学校校庭
 
無料の巡回バス
 
各かまくら会場を回る
「無料の巡回バス」が運行されます。
運行時間は17:40頃から21:00頃までです。
「市役所角(横手市役所本庁舎前)」
→「南小(横手南小学校)」
→「横手公園」
→「本町(蛇の崎川原)」の
4カ所を結んでいます。
 
かまくら職人
街中に並ぶ「かまくら」は
30歳代後半から最高齢77歳までの
「かまくら職人」と呼ばれる地域の職人達が
1ヵ月前の1月半ば頃から作り始めます。
 
昭和34(1959)年に「モデルかまくら」が作られ
現在のような形の「かまくら」になりました。
 
なお「かまくら」の作り方については、
一般社団法人「横手市観光協会」が
次のような指導を行っています。
 
かまくらの作り方
1.雪を積み上げる
  直径約3.5mの円を描いて
  その中に雪を積み上げ、
  踏み固めながら3m位の高さに
  積み重ねていきます。
 
2.穴開け
  正面入口部分に
  縦1.3m、横0.7mの印をつけ、
  穴を掘り始めます。
  壁の厚さを50cm残し、
  内部を大きく掘り上げます。
 
3.仕上げ
  内側と外側の壁になる部分を
  滑らかに丸く仕上げます。
  最後に、内部の正面に神棚を作って
  完成です。
 

「横手かまくら」の歴史

「横手かまくら」の行事自体は
400年以上の伝統があるのですが、
今の様式になったのは明治時代以降の
ことのようです。
 
横手の城下町は、
横手川以東を武家が住む「内町」 (うちまち)
商人や職人が住む「外町」 (とまち) に区分されて
いました。
 
武家の住む「内町」 (うちまち) では、
旧暦1月14日の夜、雪の釜を作って、
その中に門松やしめ縄などを入れ、
御神酒や餅を供えてから燃やし、
災難を除き、子供の無事成長を祈るための
「左義長」のかまくらが行われました。
 
一方商人や職人が住む「外町」 (とまち) では、
旧暦1月15日の夜に、
町内の井戸の側に「雪穴」を作って、
水神様(おしずの神さん)を祀り、
よい水に恵まれるようにと祈りました。
 
また、当時の子供達の間では、
積もった雪に穴を開けて、
その中に入って遊ぶ雪遊びがありました。
 
これらの風習が長い年月をかけて融合して、
現在のような「かまくら」になったと
言われています。
 
昭和11(1936)年に来日した
独建築家、ブルーノ・タウトが、
「横手のかまくら」を見て、
夢の国の出来事であるかのように絶賛したため
ますます盛んになったそうです。
 
実にすばらしい観物だ!
誰でもこの子供達を愛せずにはいられない
だろう。
いずれにせよ、この情景を思い見るには、
読者は、ありたけの想像力を働かせねば
ならない。
私達が、とあるカマクラを覗き見したら
子供達は世にも真面目な物腰で
甘酒を一杯すすめてくれるのである。
こんな時には、大人はこの子達に
一銭与えることになっている。
ここにも美しい日本がある。
それは-およそあらゆる美しいものと同じく‐とうてい筆紙に尽すことはできない」
 (『日本美の再発見』岩波新書 )
 
昭和27(1952)年から、
「かまくら」の開催日は
新暦2月15日となりました。
その後、「ぼんでん」と合わせて
「横手の雪まつり」として開催することに
なりました。
 
昭和34(1959)年に「モデルかまくら」が作られ
これを契機に現在のような「かまくら」が
作られるようになりました。
 
昭和37(1962)年頃になると、
自動車の交通量が多くなったため、
「かまくら」の形が
だんだん縦長になっていきました。
昭和44(1969)年には、
更に自動車の交通量が多くなり、
規制を受けた道路には
「かまくら」が作られなくなり、代わりに
「ミニかまくら」が作られるようになりました。
 
またこの頃から、
市内に点在していた「かまくら」を集約した
「かまくら通り」が設けられて、
一層の観光化が図られました。
 
 
令和7(2025)年横手の雪まつりの主な日程
❄ ぼんでん唄コンクール :2月02日 [日]
❄ かまくら撮影会    :2月14日 [金]
❄ かまくら  :2月15日 [土]・16日 [日]
❄ ミニかまくら:2月15日 [土]・16日 [日]
❄ 雪の芸術  :2月15日 [土]・16日 [日]
❄ 梵天コンクール    :2月16日 [日]
❄ 旭岡山神社梵天奉納祭: 2月17日 [月]