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室咲きの梅(むろざきのうめ)

 
江戸時代には、日本独自の生け花や
植物を鉢で栽培する庭園文化が
大きく花開きました。
 
武家社会では、
園芸は武家の嗜みとも言えるものでした。
また江戸時代も後半になると、
経済的に力をつけた町人や
長屋に住む庶民の間にも園芸文化が普及し、
路地に草花を植えたり鉢植えを並べたり、
花見や品評会が欠かせない娯楽となりました。
 
そうなると、植木屋を中心とする生産者も、
より高度な要求に応えようと
栽培技術を高めていきました。
 
新春に飾る花の需要も大きく伸びました。
花で新春を彩ることは、江戸の人々にとって、
大きな楽しみだったのでしょう。
 
 
「室」(むろ) と呼ばれる温室が考案され、
正月用の「梅」「桜」「黄梅」「木瓜」などが
促成栽培がなされるようになったのです。
 
 
今では栽培される花としては、
クリスマス用の「シクラメン」が代表的ですが、
「薔薇」「蘭」など多種の花が栽培されて
います。
 

室咲(むろざき)

 
春に咲く花を、温室やビニールハウスの中で
促成栽培をして咲かせることを
「室咲」(むろざき) と言います。
 
植物の生理を利用したり、
太陽熱や地熱などの自然エネルギーを
加温に活用したりと、
今日から見ても驚くほど合理的な促成技術を
駆使していたそうです。
 

室咲きの梅
(むろざきのうめ)

 
嘉永2(1849)年生まれの江戸っ子、菊池貴一郎が
明治38(1905)年に出版した
『絵本江戸風俗往来』には、
「室咲きの梅」(むろざきのうめ) について
次のように書かれています。
 
室咲きの梅 (むろざきのうめ)
白にて一重なる花のみなり。
この梅の鉢作りは、根締 (ねじめ)
福寿草または赤葉の南天、且つは雪割草を
添えたり。
土の上に白砂をまきて粧いたり。
この室咲梅花の鉢作りは染井、巣鴨辺より
出せり。
植木屋はこの梅の鉢を年末の進物にして、
出入り得意へ贈り、また売品にもせり。
切り花の室咲も同じく白一重の花なり。
大よそ当月中旬より売り出せり。
正月の挿し花は室咲の梅・白玉椿・柳と
せり。
 
 
 
「根締め」(ねじめ) とは、
庭木や鉢植えの根元に植える草花を指し、
足元を美しく見せたり、
空間を引き締めたりする役割があります。
 
生け花では、足元の前後に緑を足すことで
生け花全体を引き締める葉のことを言います。
剣山などの花留めを隠す役割もあります。