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7月4日は「梨の日」 ~二十世紀梨の歴史~

 
7月4日は「梨の日」です。
 
 

7月4日「梨の日」

梨の妖精「ふなっしー」が
「7月4日は『梨の記念日』で
 自分の誕生日なっしー」と宣伝して
すっかり認知度が高まりましたが、
7月4日は「梨の日」です。
「7(な)4(し)」の語呂合わせから。
 
 
「梨の日」を制定したのは、
「二十世紀梨」の名産地として知られる
鳥取県東郷町(現在は湯梨浜町)の
「東郷町二十世紀梨を大切にする町づくり委員会」
です。
「二十世紀梨」の苗木が
明治37(1904)年に移入されてから
100年経った平成16(2004)年に制定しました。
 
 

「二十世紀梨」の誕生

始まり
「二十世紀梨」は、明治21(1888)年、
千葉県八柱村 (現・松戸市二十世紀が丘梨元町) の
梨農家・松戸覚之助 (まつどかくのすけ) が13歳の時、
近所の農家のゴミ捨て場に捨てられていた
みすぼらしい梨の苗木を持ち帰り、
父親が経営する梨園「錦果園」(きんかえん)
移植したところから始まります。
 
 
松戸地方は江戸時代から梨の産地でしたが、
覚之助の家はそのちょうど2年前に
梨栽培を始めたばかりだったので、
当時まだ少年だった覚之助も
この幼木に興味を持ったのでしょう。
 
「新大白」(しんだいしら)の誕生
覚之助は世話を続け、始めて結実したのは
10年後の明治31(1898)年。
食べてみると、今までとは格段に甘く、
果汁が溢れてくる水々しさがありました。
そこで「新大白」(しんだいしら) と名付けて、
売り出しました。
この原木は、昭和10(1935)年に
国の「天然記念物」に指定されましたが
残念なことに昭和22(1947)年に枯れて
しまいました。
 
明治37(1904)年、当時広く読まれていた農業誌
『興農雑誌』(こうのうざっし)
「驚くべき優等新梨(新大白)の紹介」という
記事の中で、「新大白」が激賞されました。
 
「其味の優等甘味にして漿液最も多く
 恰 (あたか) も甘き西洋梨の如く
 且つ少しも口中は渣滓を止めず
 実に完全の梨果と称するを得べし…」
『興農雑誌』(こうのうざっし)
明治25(1892)年に設立された東京興農園(現・興農学園)が創刊した雑誌で、
主に欧米から持ち込んだ商品作物の種苗、
農機具、肥料、書籍などを日本全国に
紹介する役割を果たしていました。

kgim.co.jp

 
「新大白」から「二十世紀梨」へ
『興農雑誌』で激賞された同じ年に、
東京興農園主の渡瀬寅二郎 (わたせとらじろう)
東京帝国大学の池田伴親助教授が相談して、
「二十世紀になったら梨の王様になるだろう」
との夢を託し「二十世紀梨」と名付けました。
この年、明治37(1904)年は
「日露戦争」が勃発した年でもあり、
戦争後の好景気とともに、全国各地で
「二十世紀梨」の栽培面積が増やして
いきました。
 
 
現在、「二十世紀梨」の産地としては、
鳥取県・長野県が有名です。
地元の千葉県は降雨が多いことから、
病気に罹りやすいため栽培が難しかったのです。
 
 

「二十世紀梨」、鳥取へ!

松戸覚之助から苗木を購入
 
鳥取県に初めて
「二十世紀梨」の苗木を持ち込んだのは、
松保村(現・鳥取市桂見)で農業を営んでいた
北脇永治 (きたわきえいじ) です。
 
「みかんには寒すぎ、りんごには暑すぎる」
鳥取の気候に悩んだ北脇永治は
「二十世紀梨」に目をつけ、明治37(1904)年、
松戸覚之助から苗木を10本購入して、
自分の果樹園に植えました。
これが鳥取県における
「二十世紀梨」の歴史の始まりです。
 
当時26歳であった北脇永治は、
「二十世紀梨」の育成に没頭し、
果樹園の拡張もしていきました。
また機会をみては、「二十世紀梨」栽培が
農家にとって有利であることを人々に説き、
県の試験場が苗木を育て農家に配り始めると、
「二十世紀梨」栽培は次第に鳥取県全域に
広まっていったのです。
「二十世紀梨」のみずみずしさで高値をつけ、
農家の収入は飛躍的にアップしていきました。
 
この時、植えた場所は、現在、
とっとり出会いの森 (鳥取市桂見403-3)」となっています。
千葉県の原木も昭和23年に枯れてしまい、
全国で初めて植えられた直系の子は
ここにあるこの3本だけとなり、
鳥取県の天然記念物に指定されました。
現在も「JA全農とっとり」の管理の下で
大切に育てられ、約1世紀経った今でも、
毎年もみずみずしい実をつけています。
(非売品)
なお令和4(2022)年、親木の穂木受渡式が
執り行われ、118年ぶりに松戸市へ里帰り
を果たしました。

www.city.tottori.lg.jp

 
黒斑病(こくはんびょう)との闘い
しかし明治43(1910)年頃から梨の実を腐らせる
「黒斑病」(こくはんびょう) が蔓延し始め、大流行。
全く収穫が出来ない梨園も出て、
他県では栽培を断念する産地が相次ぎました。
 
鳥取県も例外ではなく、
特に大正12(1923)年から3年連続で
大暴風や干ばつなどの大災害に加えて、
「黒斑病」も猛威を振るい、
鳥取県の「二十世紀梨」は壊滅の危機に
陥ってしまったのです。
 
北脇永治は、この時も、持ち前の行動力で
県や国を説得し、動かします。
国から植物病理学者の卜蔵ぼくら梅之丞うめのじょうを招いて、
「黒斑病」を防ぐ指導を受けます。
更に「鳥取県二十世紀梨黒斑病防除組合
連合会」という黒斑病を防ぐ組合を組織し、
仲間と一緒に県内一斉の薬剤散布を
1年、2年と実施したところ、
これが目を見張るような効果を上げ、
「黒斑病」を克服し農家を守りました。
 
その一方で大正14(1925)年設立された
「鳥取県梨共同販売所」の初代所長となり、
「二十世紀梨」の販売ルートを拡大したり
「二十世紀梨」専用肥料作りにも力を注ぎ、
品質の向上にも取り組みました。
その後、急斜面でも栽培出来るということで
昭和8(1933)年頃からは急速に栽培面積が増え、
今では日本一の産地となり、
鳥取県を代表する果物となりました。
そして北脇永治は、「二十世紀梨育ての親」と
まで言われるようになりました。
 

「二十世紀梨」とは

 
今では「二十世紀梨」は国内だけでなく、
海外にも輸出されるほど、
梨の品種の中でも流通量が多い品種です。
 
特徴
 
「二十世紀梨」は、「青梨」の代表品種で、
甘みの中に爽やかな酸味を持ち、
滴るほどの水分を含んでいて
シャキシャキとした食感も魅力です。
青梨と赤梨の違い
 全ての梨は「青梨」と「赤梨」の
 どちらかに分類されます
 「青梨」は皮が緑色で、
 スッキリした甘さが特徴です。
 「赤梨」は皮が薄い茶色で、
 果汁たっぷりの甘さが特徴です。
 
出回り期
「二十世紀梨」の旬は8月頃から10月頃まで、
9月頃が出荷の最盛期です。
 
選び方
 
形がふっくらとしていて、
ヘタの部分まで張りが良く、
持った時にずっしりと重量感があり、
実が硬いものを選ぶと良いでしょう。
また果皮に傷や色ムラがなく、
緑色が強いものはシャキシャキとした食感が、
黄色み掛かったものは甘味が強い傾向が
あるので、それぞれ好みで選びましょう。
 
保存法
梨の中では日持ちのとても良い品種です。
冷蔵庫なら完熟したものでも
1週間は保存できます。
 

もう21世紀だけど、
名前はどうなる?

「二十世紀になったら梨の王様になるだろう」と
19世紀末に名付けられた「二十世紀梨」は、
見事に期待に応え、
日本の梨の生産量一位を席巻し続けました。
あれから100年以上の年月が経ち、
時代は「二十一世紀」。
これからも「二十世紀」?
 
大学や農業試験場などでは
品種改良の試みが日々なされているため、
「二十世紀梨」よりも
病気に強く糖度の高い青梨も開発されています。
「ゴールド二十世紀」「おさ二十世紀」
「瑞秋」などの品種が生まれています。
また無袋栽培された「二十世紀」は
「サンセーキ」の名前で売られていること
もあります。
 
中には、実際に「二十一世紀」という名で
登録を申請したこともあるそうですが、
他の商品で既に「二十一世紀」が
商標登録されていたため、
「二十一世紀梨」は実現しませんでした。
ですから、これまで通り「二十世紀」です!
 

日本梨の品種別栽培面積

現在の栽培面積一位は「幸水」で、
全体の40%近くを占めています。
次いで「豊水」は26%、
続いて「新高」が9%、
「あきづき」と「二十世紀」がほぼ並んで5%と
なっています。
「二十世紀梨」は、現在は、
和梨の主流ではなくなってしまいましたが、
「幸水」「豊水」の2品種は
「二十世紀梨」の遺伝子を受け継いでいます。
 
  1位:幸水(こうすい)   :39.1 %
[旬:8月上旬から9月頃]
 
 
梨の中では比較的小ぶりなサイズですが、
果肉は緻密で多汁、
甘味と酸味のバランスが良く、
上品な香りが特徴です。
 
  2位:豊水(ほうすい)   :25.9 %
[旬:8月下旬から9月中旬頃]
 
 
色や形は「幸水」とよく似ていますが、
「幸水」よりも大ぶりで、食べ応えがあります。
果肉は柔らかく、たっぷりと果汁を含んでいてジューシーです。
甘味を強く感じられますが、その中にほのかな酸味もあり、後味はスッキリしています
 
  3位:新高(にいたか)   :9.3 %
[旬:9月頃から10月頃]
 
 
新潟県で生まれた主要品種の一つ。
梨の中でも大ぶりで、
平均的なサイズでも約800gを超えます。
果肉は柔らかく舌触り滑らかで、
口いっぱいに広がる上品な甘みが特徴です。
 
  4位:あきづき       :5.5 %
[旬:9月中旬から10月上旬]
 
 
月のようにまん丸で美しい外観から
「秋に実る満月」という意味を込めて
名付けられた品種です。
持ってみると、ずっしりとした重さがあり、
果汁と緻密な果肉が
たっぷり詰まっていることが分かります。
 
  5位:二十世紀梨      :5.3 %
[旬:8月頃から10月頃]
 
 
  6位:新興(しんこう)   :2.4 %
[旬:10月中旬から12月中旬]
 
 
400g〜500gまで育つので、
大きくて存在感があります。
甘みだけでなく、
しっかりとした酸味があるのが特徴的な梨。
シャキシャキとした食感がクセになります。
 
  7位:南水(なんすい)   :2.3 %
[旬:9月中旬から12月上旬]
 
 
長野県で誕生した、やや扁円な形をした
350g程の中玉の赤梨です。
糖度が高くて甘みが強く、酸味が少なく、
果汁が豊富でジューシーな甘味を楽しめます。
 
  8位:ゴールド二十世紀   :1.2 %
[旬:9月頃から10月頃]
 
「二十世紀梨」の、黒斑病に対する
抵抗性を持たせた改良種です。
果肉はやや緻密で柔らかめの食感、
程良い甘さと酸味のバランスがちょうど良く、
とてもジューシーで食べやすい梨です。
 
  9位:にっこり       :1.1 %
[旬:10月中旬から11月中旬]
 
 
旬は秋頃ですが、貯蔵性が高く
お正月まで味わえるのが特徴です。
800g程と大粒で、甘味が強く酸味が少なめ。
栃木県の「日光」と、梨の音読み「り」を
合わせた「日光梨」から
「にっこり」に変化したとそうです。
 
10位:新甘泉(しんかんせん):0.9 %
[旬:8月中旬から9月上旬]
 
 
平成20(2008)年に誕生した、
日本で一番糖度が高い梨と言われる
鳥取県オリジナルブランドです!
大きさは500gほどの大玉。
シャリシャリとした歯応えを楽しめる
ボリューム満点の梨です。