江戸の昔、二月と八月を一括りに
「二八月」(にはちがつ) と呼びました。
そして「二八月」(にはちがつ) は、
商売の最も振るわない月、
天候の急変しやすい月、
灸をすえるのに適当な月と言われました。
「二八」(にっぱち)は
商売が低調
「二八」(にっぱち) とは
「ニッパチの法則」とも言われ、
2月と8月は商売が低調で
売上げが下がるのが常だという意味の
言葉です。

その原因については様々言われています。
2月は12月から1月までは、
クリスマス・正月・忘年会・新年会などの
出費の嵩む行事が多くあって、
その反動として
2月は出費を抑えようとするため
売り上げが落ちるというものです。
季節的に2月は寒いので
購買意欲が下がるのではないかとも
言われています。
一方8月は季節的に暑いので購買意欲が下がり、
更に「お盆」があるために
お店に行かないので売り上げが下がるという
ものです。
二八月荒れ右衛門
(にはちがつあれえもん)
「二八月荒れ右衛門」(にはちがつあれえもん) とは、
二八月 (にはちがつ)、二月と八月は
天候の急変しやすく嵐が多い月なので、
注意を喚起するために生まれた諺です。
ここで言う「二月」と「八月」は、
「旧暦の二月」と「旧暦の八月」のことで、
今の新暦の三月と九月に当たります。
つまり、「春分」「秋分」の時期の月は
季節が大きく変わる時期に当たり、
天候が荒れる日が多いのを人になぞらえて
「ニ八月荒右衛門」(にはちがつあれえもん) という
呼び名が生まれました。
春嵐(はるあらし)
二月から三月にかけて吹く激しい風を
「春嵐」(はるあらし) と言います。
旧暦二月、今でいう「三月」の頃は、
日本付近に北から入り込んで来る冷たい空気と
南から流れ込む暖かい空気がぶつかり合って
上昇気流が生まれることで、
「温帯低気圧」が急速に発達するために、
「春嵐」と呼ばれる激しい現象が発生し、
台風並みの暴風や猛吹雪が吹き荒れ、
海岸では高波となることもあるので
注意が必要だという意味です。
「春一番」の強風による嵐などや、
春の彼岸の前後に吹く西風は
「彼岸西風」(ひがんにし) などが
これに当たります。
秋の嵐(あきのあらし)
一方、旧暦八月は現在の「九月」に当たり、
台風が暴れる盛りの頃です。
嵐に注意すべき日とされた「三大厄日」
この時期に集中しています。
三大厄日
・八朔(はっさく)
八月朔日の略で、旧暦の8月1日のこと。
令和7(2025)年は9月22日。
令和7(2025)年は9月22日。
・二百十日(にひゃくとおか)
雑節の一つ。立春の日から数えて210日目。
令和7(2025)年は8月31日。
令和7(2025)年は8月31日。
・二百二十日(にひゃくはつか)
雑節の一つ。立春の日から数えて220日目。
令和7(2025)年は9月10日
令和7(2025)年は9月10日
旧暦八月は収穫の月に当たるため、
台風の来襲に十分な備えをしておかないと、
折角、一年丹精した稲が
収穫目前で駄目になってしまわないようにと
注意を促した諺です。
二八月荒れ右衛門に似た諺

「ニ八月荒右衛門」に似た諺に
次のようなものがあります。
・二八月に思う子船に乗するな
・二八月は船頭のあぐみ時
・二八月は風の秋
・二八月の掌返し
・二八月の風で傍 (そば) が迷惑
「二八月に思う子船に乗するな」と
「二八月は船頭のあぐみ時」の二つは
海が荒れるので船に乗るのは
危険だということを表している言葉です。
「二八月の掌返し」は、
この時期の風向きが目まぐるしく変化する
様子を掌を返すと表した言葉です。
最後の「二八月の風で傍 (そば) が迷惑」は、
「傍」(そば) と「蕎麦」(そば) を掛けて、
この時期の嵐で
作物の蕎麦が被害を受けるということを
「傍迷惑」(はためいわく) と言っているのです。
「二日灸」(ふつかきゅう/ふつかやいと)
二八月 (にはちがつ)、二月と八月は、
灸をすえるのに適当な月であることを
「二日灸」(ふつかきゅう/ふつかやいと) と言います。
旧暦の「2月2日」 「8月2日」にお灸を据えると、
「病気や災難に遭わずに
無病息災でその年を暮らせる」とか、
「長寿になる」という俗信がありました。
なお令和7(2025)年の「二日灸」は、
旧暦2月2日は3月 1日(土)、
旧暦8月2日は9月23日(火) になります。