
「二百十日」も過ぎて、
台風や雷はこれからがシーズン。
9月から10月にかけては、
年間で台風や雷が
最も多い時期と言われています。
秋の雷
俳句で単に「雷」と詠むと夏の季題ですが、
初秋の頃にも、入道雲が湧いて雷が鳴ったり、
寒冷前線の影響で大気が不安定になって
雷雨がもたらされたりします。
この初秋になる雷は「秋の雷」(あきのらい)、
あるいは「秋雷」(しゅうらい) と言って、
秋の季語になります。
稲妻(いなづま)
夏の季語の「雷」が大音響であるのに対し、
秋の雷は、空がひび割れるかのように走る
「稲妻」です。
「稲妻」はあくまでも「光」自体を指し、
音を伴わないのが特徴です。
秋の「雷」に関する季語には、
「稲妻(夫)」「稲光」「稲の殿」
「稲つるみ」「稲つるび」「稲魂」・・・と
稲刈りの季節ですから
「稲」のつくものが多いです。

8月に花をつけた稲も、
9月頃になると実をつけていきます。
稲にとって大事な実をつける時季に起こる雷は
昔から稲の豊作に関連があり、
「雷が多い年は豊作になる」と
言い伝えられてきました。
「秋の稲妻は千石増す」という諺もあり、
秋に雷が鳴ると、一度稲妻が光るだけで
収穫量が千石増えるという意味になります。
この「稲妻」という言葉は、
かつては「稲の夫 (つま)」を指し、
雷光 (らいこう) が稲を妊娠させて
稲の実りを増やす力がある(豊作をもたらす)
と信じられていたことに由来します。
「稲が実る頃の夫 (つま) の大事な役割」とも
言われてきました。
これは単なる言い伝えではなく、
雷の電流が作物に対して
良い影響を与えることは
科学的に立証されているのです。
「雷」は大気中での大規模な放電現象で、
その際、普通には起こらない化学反応、
例えば「窒素分子」の分解が起こります。
「窒素原子」は
大気の8割を占める「窒素ガス」の形で
自然界に大量に存在しています。
と同時に、生物の体を構成する
タンパク質の基本要素「アミノ酸」には
必ず含まれている元素なのですが、
「窒素ガス」の分子は極めて安定しているので
植物はそれを直接吸収することは出来ません。
それが「雷」によって、
通常の環境ではほぼ起こることのない
「窒素分子」の活性化により
「窒素化合物」が生じ、
その「窒素化合物」が雨によって
「硝酸」となり地中に溶け、
作物の生育に良い影響を与えるのです。
雷の放電、つまり「稲妻」は
もう一つの自然産の「窒素肥料」なのです。
昔の人は科学的な知識はなくても、
雷光が稲穂によい影響を与えることを
経験的に知っていたようです。
雷光は稲を実らせる「稲の夫」となりました。
