「つばめきたる」と読みます。

冬の間を南の島で過ごした夏鳥の燕(つばめ)が
数千キロもの旅をして、日本にやってくる頃です。
冬を暖かい東南アジアで過ごしたツバメ達が、
繁殖の為、春になるとはるばる海を渡って日本にやってきます。
ツバメが飛来してきたら、本格的な農耕シーズンの始まりです
ツバメは、日本へやって来てしばらくすると、
泥や枯れ草などを運び、
人家やお店の軒下などに巣作りを始めます。
糞などを落としたりするため、
最近ではツバメの巣を迷惑がって、
崩してしまう人も多くなりましたが、
昔から、ツバメが巣をかけた家は
幸福になるという言い伝えがあります。
かつてはツバメは、どこからやってくるのか分からず、
海の彼方にある
「常世国」(とこよのくに)からやって来た神の使いであると
信じられていました。
常世の国は海の彼方にあるとされる神仙の国です。
穀物の神である「少名毘古那神」(すくなひこなのみこと)は、
常世の国からガガイモの実の船に乗ってでやって来て、
出雲の大国主命の国造りに協力して全国を回り、
医薬や酒や温泉の神としてまた、
まじないなどなど多彩な能力も発揮され、
そしてその後、登った粟の茎に弾かれて渡っていったと
されています。
そんな常世の国からきた神の使いである
ツバメですから、
幸福をもたらしてくれるという
良いイメージを持たれていたのです。
- ツバメが巣をかけた店は繁盛する
- 家にツバメが巣をかけると金運が上がる
- 家にツバメが巣を作った年に子宝に恵まれた
など、古くから様々なジンクスがあります。
ツバメが巣を掛けると、その下が糞で汚れるのですが、
それすらも「運が付く」とさえ言われています。
実際、農家などにとってツバメは、農作物を荒らすことなく、
逆に、ウンカやシロアリなどの害虫を盛んに食べてくれる
この上ない益鳥であることから、
「ツバメが来ると豊作になる」と言って、
格段に大切にされてきました。
また、ツバメは警戒心が強く、本能的に危険であるか否か、
猛禽類などに子を狙われる可能性などを察知し、
騒音などの少ない、
比較的安全な場所に巣を掛けると言われています。
ですから、ツバメが巣を作ったのであれば、
その家は過ごしやすく安全だということになると
考えられていたのです。
そして9月半ばの「玄鳥去」(つばめさる)頃、
ツバメは日照時間の長さを感知して渡りを開始するのです。