幕末頃、大坂の一部や徳島・伊勢地方では、
3月の「上巳の節句（桃の節句・雛祭り）」で
飾った雛人形を、
半年後の9月9日「重陽の節句（菊の節句）」に
再び飾って、健康、長寿、厄除けを願う
風習がありました。
「後の雛」(のちのひな) とか、
秋に菊とともに雛人形を飾るので
「秋の雛」とか「菊雛」とも言いました。
地方によっては
「鬘子節供」(かずらこせっく) と呼んで
雛草で作った人形を供えたり、
流し雛をしたりしたそうです。
また西日本の広い地域では、
また旧暦の8月1日の「八朔」に、
「八朔雛」を飾る風習もありました。
『守貞漫稿』には次のようにあります。
9月9日を重陽の節と云ふ。
…大坂にては、今日も女子等、
雛を祭る者あり。
しかれども必ずとせず。
また上巳のごとくにはあらず。
調度など略して飾らず。
夫婦雛のみを祭り、
あるひはわづかに調度を出すのみ。
京都にもかくのごときか。
江戸は更にこの行なし。
また天保年間 (1830年代) に出版された
山東京山の
『五節供稚童講釈』(ごせっくおさなこうしゃく) には「九月のひなまつり」と題して、
次のような記事が載っています。
むかしは三月三日、九月九日、
一年に二度ひなをまつり、
九月をのちのひなといふ。
されど、三月にくらべては
まつりやうおろそかなり。
おもふに、のちのひなは、
ひなさまのむしぼしなるべし。
江戸にては天和のころまでは
のちのひなをまつりしが、
いつとなくすたれて、今はたえたり。
3月の｢上巳の節句(桃の節句)｣で
飾った「雛人形」を
9月の｢重陽の節句(菊の節句)｣に
虫干しを兼ねて再び飾ったとありますが、
いつの間にか廃れたと記されています。
旧暦の9月9日は新暦では10月後半
（令和7(2025)年は10月29日）。
秋の「虫干し」には最適な時期になります。
新暦の9月9日は雑節「二百二十日」の頃で、
天候が安定しないことから、
いつの間にか廃れてしまっても
仕方がなかったのかもしれませんね。
ところがこの「後の雛」が、今再び、
「大人の雛祭り」としても注目されています。
「桃の節句」では桃の花が添えられ、
どちらかと言うと子供向きであるのに対し、
「重陽の節句」では菊の花が添えられ、
月見をしながら、菊酒をいただき、
深まる秋に人生を重ねるひと時には、
華やかな中にも落ち着いた大人向きの雰囲気が
漂います。
家族みんなで楽しむもよし、
自分へのご褒美にするもよし、
女子会で盛り上がるのもよし。
子供の頃に飾ったお雛様を飾るのもよし、
大人になった自分が選んだ
お気に入りのお雛様を飾るのもよし。
自身の幸せや健康を願って、
お雛様とともにお祝いしませんか？
